「捕食者なき世界」
ウィリアム・ソウルゼンバーグ
文春文庫
この最近で一番楽しかった本。
頂点捕食者(トッププレデター)、
またはその存在がもたらす恐怖心が
生態系を豊かに保っている、というような内容。
キーストーン種とよばれる生態系の要になる生き物と
その存在がなくなった世界の様子を冷静に観察し
た人々の長きにわたる物語が集約されている。
ヒトデに始まり、ラッコがいなくなった海からケルプの森がなくなり
ウニばかりになった海の話や、
それに続くシャチやクジラにまつわる話。
オオカミがいなくなった米国のイエローストーンへ
一度は絶滅したオオカミが再導入され、
生態系が復活した話など、
複雑に入り組んだ生態系の真髄に触れるような、
自然の持つ調整力を知ることができるような
そんな物語がたくさん散りばめられている。
その他の感想としては自然界だけではなく、
人間界でも全く同じだと思った。
人間社会も絶対的な力や恐怖心がないと、
ビックリするほどに機能しない。
日本の漁業において、不正を監視する第三者機関が存在ないことが
漁業の衰退の原因であることは、その好例であろう。
弱者が隙を見つけては悪さをすることもまた
捕食者や恐怖の欠如によるものなのだろう。
ここ最近それを痛烈に感じている。
とにかく自然好きにはおすすめの一冊だ。