3.24.2024

「捕食者なき世界」頂点捕食者の存在は環境を豊かにする!


「捕食者なき世界」 
ウィリアム・ソウルゼンバーグ 
文春文庫 




この最近で一番楽しかった本。

頂点捕食者(トッププレデター)、

またはその存在がもたらす恐怖心が

生態系を豊かに保っている、というような内容。

キーストーン種とよばれる生態系の要になる生き物と

その存在がなくなった世界の様子を冷静に観察し

た人々の長きにわたる物語が集約されている。

ヒトデに始まり、ラッコがいなくなった海からケルプの森がなくなり

ウニばかりになった海の話や、

それに続くシャチやクジラにまつわる話。

オオカミがいなくなった米国のイエローストーンへ

一度は絶滅したオオカミが再導入され、

生態系が復活した話など、

複雑に入り組んだ生態系の真髄に触れるような、

自然の持つ調整力を知ることができるような

そんな物語がたくさん散りばめられている。 

その他の感想としては自然界だけではなく、

人間界でも全く同じだと思った。

人間社会も絶対的な力や恐怖心がないと、


ビックリするほどに機能しない。


日本の漁業において、不正を監視する第三者機関が存在ないことが


漁業の衰退の原因であることは、その好例であろう。

弱者が隙を見つけては悪さをすることもまた

捕食者や恐怖の欠如によるものなのだろう。

ここ最近それを痛烈に感じている。

とにかく自然好きにはおすすめの一冊だ。