12.19.2024

ハタハタの不漁は温暖化が原因なのか!?



3年ぶりに秋田に帰ってきた。
今回もお世話になっているシートピアの金坂さんに挨拶して、男鹿半島へ向かった。

狙いはハタハタだ。

とはいえ、3年前に資源量が限界だと思われていたところからさらに悪化していて、期待はできない。

今年の初漁日予測は122日、実際にハタハタが現れたのは14日。それもわずか4キロ。水揚げは翌15日だから、禁漁が明けた1995年以降で最も遅い初漁日となった。
19
日現在でもまともな水揚げはない。


冬の味覚「ハタハタ」 秋田・男鹿市の漁港では19日朝も大漁とはならず AAB秋田朝日放送

https://www.youtube.com/watch?v=xayWEklpBO4

秋田の「季節ハタハタ」はまだ大漁とはならず海保はハタハタ釣りの際の
事故に注意を呼びかけ (2024/12/18 19:32) AAB秋田朝日放送

https://www.youtube.com/watch?v=yDd-MfUc6s0


昨年が禁漁以来最低の漁獲量だったけど、今年はそれを下回るだろう。秋田の漁港を巡っても活気がない。大量のハタハタを水揚げする準備だけが整っていて、閑散とした漁港には猫しかいない。

温暖化だけが原因なのか?

不漁の原因は、ネット上の秋田のハタハタ関連情報はほとんどが温暖化の影響だとしている。


確かに、近年の温暖化は深刻だ。ハタハタが温暖化で来なくなったと言われれば、ほとんどの人は納得するだろう。
でも、それが最大の原因だと考えるのは危険すぎる。


温暖化のせいにすれば、責任を誰も負わなくていいから。


確かに今年は全国的に水温は高かったが、ハタハタの棲んでいる深海は

水温1,5℃のとても安定した水塊であり、水温変化の少ない海域だ。

それに日本海は冬の寒波が来れば、表層水温は劇的に下がる。

今回の寒波で浅海の水温は13℃を下回りハタハタの産卵に適した水温となったが、

それでもハタハタは来ない。


真の原因は、獲りすぎ

かつて秋田沿岸すべての地域で産卵していたハタハタは、今では一部のスポットにしか来なくなった。漁獲がない地域がある一方で、ある地域では漁獲枠の上限まであっという間に獲れてしまった。その後、漁民の訴えがあると、すぐに漁獲枠が引き上げられた。

漁獲枠とは、本来は持続可能な漁業を行うための「この量までなら大丈夫」という指標。これを守らなければ資源は減る。漁業先進国では漁獲枠は絶対的なものとして守られているが、日本ではあまりにも軽視されているのが現状だ。


秋田の禁漁の歴史

かつて秋田では3年間の禁漁を行い、その後の漁獲制限も導入して資源回復を成功させた。それが今、再び危機的な状況にあるが、禁漁への動きはない。

秋田の水産に詳しい識者に話を聞いたところ、来年以降も禁漁にはならず、自然禁漁になるだろうとのことだった。つまり、ハタハタが捕れず漁業者が減ることで、実質的な禁漁状態になるという意味だ。禁漁の実現には膨大なエネルギーが必要ということが理由のようだ。


温暖化を免罪符にしてはならない

帰り際、タクシーのおじさんも「ハタハタはもうダメだ」と言っていた。その原因は温暖化だ、と。海と関わりのなさそうな人でも皆同じようなことを言う。これはマスメディアの論調によるものだろう。温暖化の影響は確かにある。

でも、ハタハタに関して最も深刻なのは乱獲だ。

資源量が減れば減るほど回復は困難になる。
もう手遅れだと感じる部分もあるけど、ハタハタの生命力は凄まじい。
適切な管理をすればハタハタの復活はまだ可能だろう。

ハタハタの復活を信じる要因はいくつかある、まず漁獲が71トンまで落ちた1995年に禁漁を実施したことで10年ほどで3000トンまで増えたという事実。

また温暖化が進もうと、ハタハタの生息水域の水温はほぼ変わらないし、産卵場所である浅海も水温は冬になれば必ず下がるからだ。ハタハタが来なくなるとしたら藻場がなくなるほどに温暖化や環境変化が起こったときだろう。それ以外で来ないのであれば漁獲を改めるしかない。

現状では禁漁の一択

漁師や地域住民にも、あらゆる漁業関連従事者になんの忖度もなく意見を言わせてもらえるならばそういうことになる。近年では資源回復のセオリーが出来上がりつつある。あとは選択するだけだ。

僕は秋田が大好きだ。だからからこそ未来に希望を持ちたい。
ハタハタを再び秋田の海に取り戻すために、
今一度、何をするべきか、みんなで考えるべきではないだろうか。





「ハタハタ 荒海にかがやく命」あかね書房 写真・文:高久至

 秋田の海で躍動するハタハタとその資源の問題について書いた写真絵本


ハタハタの未来のためにできること

4.15.2024

「潜る 日本海中紀行」(平凡社)ようやく出版!

 

「 潜る 日本海中紀行 」平凡社
A4 192頁 定価:税込7920円
4月末出版

2016年から約1年。
「海を歩く」と題して日本の海を津々浦々駆け巡りました。
旅を始めてから8年以上もかかってしまったけど
ようやく写真集を出版することができました。

仕事を辞めて、家族を置いて旅に出ることは
不安でしかなく、
それでもどうしても、日本の海を知りたくて、
そして伝えたくて、居ても立ってもいられずに旅に出た。
そしてたくさんの海とたくさんの人に出会い
学び、喜び、反省しながら日々を過ごした。
振り返るとウルウルしてしまう。 

写真集の出版は難航し、何度も諦めかけたけれど
お世話になった皆様の顔や、海であった様々な出来事を
思い浮かべては奮起して、なんとか実現することができました。

本書の作成に関してはあまりに多くの方にお世話になりました。
受けた恩はあまりにも大きく、
とても恩返しはできそうにないけど、
せめて海の未来のために何か少しでも
伝えられたらと思いこれまでやってきました。

「日本の海のことを伝えたい」
この思いは旅を始める前よりもさらに大きくなった。
これからも海や未来世代のために
できることをしていこうと思います。
何より自分自身が、一昔前の
豊かだったという海を見てみたい!



本書の一押しは荒俣宏さんの推薦文!(一部抜粋)
旅の最中にメールでのやり取りを続け
先生の海への疑問や好奇心を糧にできたおかげで
より良い旅ができました。
本当に感謝ばかりです。



本書の内容を少しだけ。
全国35都道府県の海中写真で地域ごとに
自分の感じたことを書き、イメージに合う写真を
載せています。
地域は大きく6つに分かれていて、
写真はおよそ700点。
文章は5万字以上。
(写真集というより写真文集かな。)
それでも載せきれない写真やエリアが
ストーリーが多く随分と悩みました。
(広島県だけ潜ったのに載せることができずにすいません。。。小声)



写真はできるだけ浅瀬で環境を入れ、
ダイバーではない人にも伝わりやすいような
ものを選びました。


えりも岬のゼニガタアザラシ
とにかくかわいかった。。。


海を歩く(このブログ)
日本の海を巡りながら毎日ブログ
更新したなぁ。
2016年3月から1年間は
ほぼ毎日更新してました。


キャラバンをキャンピングカーに改造して
ビーグル号と名付けて全国津々浦々潜り歩く。
外装が塩にやられて、ボロボロ崩れてくるから
ドキドキしながらなんとか屋久島まで帰れた!(笑)


車内の様子。ここに畳を敷いたのが完成形。
このお家懐かしいなぁ。



タンクと器材を詰め込んで、
気になる海を見つけては潜りました。
まぁよくやるもんだ(笑)





車の上に積んであったカヤックで
アザラシと向き合うの図。




旅ではいろんなもの食べたなぁ。
熊本ではマヒトデ!
とりわけ美味しいわけではないけど、
食べずにはいられない!?


エゾバフンウニ
海辺でたくさん美味しいものを恵んでいただいた。
今思うと贅沢なひと時だったなぁ。


2016年からの1年間では回りきれなかった
海をちょくちょく訪れました。
旅の締めくくりの南大東島では
岸に打ち寄せられる無数のゴミを誰に頼まれるでもなく
拾い集める新城さん(80歳)に出会った。
その後一緒にゴミを拾ったり、たくさんお話を
聞かせてもらったけど、感動することばかりでした。
こんな出会いのためにきっと旅を続けているのかな。


「 潜る 日本海中紀行 」平凡社
A4 192ページ
定価7,920円(本体7,200円+税)

ちょっと高いけど、濃い内容となっています
何卒よろしくお願い致します。

メッセージいただければ
送料無料で屋久島からお送りいたします。
ご希望があればサインも入れさせていただきます。
買取部数もあるので直接かっていただけると
嬉しいです。


一部ダイビングショップでも取り扱っていただいているので
見かけたらぜひお店でお買い求めください。


またこの本をお店で取り扱っても良いよ〜
という方がいたらご連絡お待ちしています。




itarutakaku@gmail.com
snsやLineでもOKです。






それではまた。




3.24.2024

「捕食者なき世界」頂点捕食者の存在は環境を豊かにする!


「捕食者なき世界」 
ウィリアム・ソウルゼンバーグ 
文春文庫 




この最近で一番楽しかった本。

頂点捕食者(トッププレデター)、

またはその存在がもたらす恐怖心が

生態系を豊かに保っている、というような内容。

キーストーン種とよばれる生態系の要になる生き物と

その存在がなくなった世界の様子を冷静に観察し

た人々の長きにわたる物語が集約されている。

ヒトデに始まり、ラッコがいなくなった海からケルプの森がなくなり

ウニばかりになった海の話や、

それに続くシャチやクジラにまつわる話。

オオカミがいなくなった米国のイエローストーンへ

一度は絶滅したオオカミが再導入され、

生態系が復活した話など、

複雑に入り組んだ生態系の真髄に触れるような、

自然の持つ調整力を知ることができるような

そんな物語がたくさん散りばめられている。 

その他の感想としては自然界だけではなく、

人間界でも全く同じだと思った。

人間社会も絶対的な力や恐怖心がないと、


ビックリするほどに機能しない。


日本の漁業において、不正を監視する第三者機関が存在ないことが


漁業の衰退の原因であることは、その好例であろう。

弱者が隙を見つけては悪さをすることもまた

捕食者や恐怖の欠如によるものなのだろう。

ここ最近それを痛烈に感じている。

とにかく自然好きにはおすすめの一冊だ。



12.29.2023

2023年の潜り納めはアミダコと!

2023/12/29
静岡県 大瀬崎 
はまゆう荘

今年も古巣の大瀬崎に帰ってきた。
早速、店長の相原さんと一緒に潜ってみると
すぐにリンリンとベルが鳴って
テンガイハタを見せてくれた!!
相原さんも大瀬もやっぱすごいな。。。
あっという間に時は過ぎて、8日間をふりかえる。
一番はサルパに入るアミダコ!
ず〜っと憧れていた生き物だ。
教えてくれた皆さまと、この出会いに感謝。


アミダコ
ゆっく〜りと、ふわふわと
漂ってた。


キンギョハナダイの白化個体
目もちょっと赤いしアルビノなのだろう。
ソフトコーラルを撮影していたら視界に現れた。



白いカサゴ!
これはアルビノのではなくただの一時的な体色変化。
白いソフトコーラルにいるとこんなにも白くなる。
黒い地面に戻ればあっという間に元の体色になる。


妊娠中のカサゴ。
水深40mにて。
この数年で急激な温暖化が進む大崎崎では
カサゴもメバルも絶滅寸前。
あらゆる生き物が20年前とは大きく変わっている。


メバルの求愛
もはや数えられるくらいしかいないけど健気に求愛していた。
お腹の大きなメバルもいて愛おしい。
ここのメバルには想い出いっぱいあるなぁ。



温帯種が減る一方で南方種はものすごい勢いで増えている。
ここ数年同じようなこと書いてるけど記録として。



ベニクラゲモドキ


さてこれにて今年は潜り納め。
今年も各地でいろんな方々にお世話になりながら
潜った。皆さま大変ありがとうございました。

来年は写真家業もちょっと慌ただしくなりそうです。
春にはこの10年の集大成となる写真集が出せそう。
そして東京、大阪で写真展も開催します。
また詳細が決まったら報告しますね。

それでは良いお年を!






12.02.2023

150周年記念講演。

お稲荷さんのお店が並ぶここは?

豊川稲荷のすぐ近くにある愛知県の豊川小学校に

呼んでいただき講演してきました。

 


講演前にこの姿で後ろの方にいたら
小学生たちの「なんか変なのいる!」
って各所でひそひそしているのが面白かった。
被り物してきてよかった!



オジサンの写真を出したらやたらみんな知っていて
びっくりした。
なんかCMで流れているらしい。
 全員魚博士なのかと思った。


海はいいよ〜。
って話とか。
日本の海のこととか、SDGs的な話とか、
そうだ、網に絡まって死んでしまったウミガメの写真では
泣きそうな子がいてドキドキ。
でも無事に終了。

最後の質問タイムでキラキラした目で
みんな手をあげてくれて嬉しかったなぁ。

ちなみに質問の一つ。
「頭のサメはどこで売っているんですか?」

えっ、、、

ア◯ゾンです(笑)





廊下で一枚。
顔出しNGだからみんな、
いなりんになってもらった。


校長先生が図書室を案内してくれて

感動してしまった。



まさかの至コーナー!
どおりでみんな、よく知っているわけだ。

方うと嬉しかったなぁ。




講演後は豊川稲荷でお参りして
狐さんに囲まれる。



屋久島に帰ってきて
我が家では2匹の獣が可愛い。


さて来年も新作をお届けできるように
今から頑張らなきゃ。


ではまた〜。


6.02.2023

「コブシメがやってきた!」アリス館 

「コブシメがやってきた!」
アリス館 
写真・文高久至 
2023年6月8日発売!



台風直前にコブシメの見本が届いた。
先日東京まで印刷の立ち会いに行ったので
不安はなかったけれどそれでも
実物を見るのはちょっとドキドキ。
うんうん。
良い写真絵本になったと思う。


コブシメ観察を始めて10数年。
この数年は誰よりも海の中でコブシメを観察したはず。
それでもコブシメにはまだまだ不思議や
魅力意がいっぱい。写真だって全然撮り切れていない。
きっと満足いくまで待っていたら永遠に終わらない。
海や自然の魅力はなんといっても
わからないところだからね。


兎にも角にも海の魅力を伝えたい!
全てはそこからはじままる。
いろんな思いを混ぜ込みながら
ようやく形になりました。




最初の写真。
コブシメがやってきた!
この色の濃淡、、、決まったなぁ。
上手く仕上げてもらいました。




東京印書館のプリンティングディレクターの高柳さんと。
いつもながら素晴らしすぎるお仕事ありがとうございます!



ピアニストのように指を動かし印刷機に指示をする。





後書きページ
僕は写真と文章を渡したらあとは結構気楽なもの。
デザインは「うまれてくるよ海のなか」と同じく
高橋さん。相変わらず素敵なお仕事です。
渋いおじさまだけどお茶目なデザインがツボです。
(見ていたらすいません、、、笑)
そして毎度のことながら編集から何から何まで
お世話してもらってるスタジオポーキュパインの
川嶋さんと寒竹さん。

皆様のおかげでこうしてまた一冊。
世に写真絵本を送り出せて幸せです。
これを見た子供たちが少しでも海や自然に興味を持ってくれたら
そんなに嬉しいことはないですね。





アリス館さんに作っていただいたPR動画です。
ちょっと恥ずかしいけど、面白い!
ありがとうございます!!!






ネットでの予約受付中です。








それではまた〜






















2.28.2023

アイスアルジーとブライン

2023/02/14 - 24
北海道・羅臼・ウトロ
水温 -1℃ 透明度10-15m

ブライン(Brine)

サハリン北東部のオホーツク海からやってきた流氷は
海を漂いながら成長して北海道の沿岸たどり着く。
流氷の生成時に凍るのは主に真水なので
塩分の高い水が氷の中に残されるが、
この高塩分水がブラインと呼ばれるものだ。
ブラインは高密度で低温のため海の底へと沈み
それを補うように海底に溜まっていた
栄養塩の豊富な海水が湧き上がってくる。
この海水の鉛直移動がオホーツク海の
豊かさの一つであるとされている。
少し話を広げると
海水が地球全体の海洋を数千年かけて巡るという
海洋大循環の始まりは
ノルウェー沖や南極などで大規模な
ブラインの沈み込みによるものだ。

今回一番の幸運はこのブラインに出会えたことだろう。
初日にうっすらと見えるブラインを新倉くんが興奮気味に
紹介してくれたことからも、
知床でこの現象が見られることの
貴重さが窺い知れた。



ブラインとハロクライン
海水に塩分差が生じることでブラインが目に見える形で現れた。


アイスアルジー(Ice algae )
言わずと知れた?流氷の恵みの一つ。
流氷に閉じ込められていた珪藻や藍藻などの植物プランクトンが
太陽光によって大増殖し流氷が赤茶色っぽく色づいた。
アイスアルジーの生成にもブラインが抜け出た流氷の隙間や
海水の流れが関わっているようだ。


ストロボを当てて撮影したアイスアルジー




オキアミ
最終日に流氷の一角でオキアミが群れていた。
流氷を巡る物語の大事な生きものなので
撮影できて嬉しかった。
でも関さんが流氷の上からずっと手招きをしてこのシーンを
教えようとしてくれていたことの方がもっと嬉しかったな。


流氷以外にもたくさんの生き物に出会えた。
クリオネを始め、ミジンウキマイマイやタラバガニ。
キタユウレイクラゲもたくさんいた。


ナメダンゴの抱卵


ヒダベリイソギンチャクに囲まれるアバチャン

たくさん撮りすぎて紹介しきれないけど
今回も流氷と流氷に生きるものたちを堪能させていただきました。
関さん、青柳さん、新倉くん大変お世話になりました!